投機筋のユーロ売り越し、2016年以来の大きさ 仏の暴動と20日の予算採決を前に
米商品先物取引委員会(CFTC)の統計で、投機筋(非商業部門)のユーロ先物の売り越しは10月13日時点で13万7,573枚となり、FXStreetによると2016年1月以来の大きさになった。週末のフランスでは生活費と予算への抗議が暴動に広がり、20日には国民議会で2027年予算案の歳入部分の採決がある。19日の東京市場でユーロは1ユーロ=1.12ドル前後、対円で177円前後と、売りはいったん一服している(財経新聞)。
桐生レオン ・ 特集 14:55 ・ 2026年10月19日CFTCが公表した10月13日時点の建玉で、ユーロ先物(CME)の非商業部門は買い22万2,929枚、売り36万502枚で、差し引き13万7,573枚の売り越しだった。前週から3万8,241枚増え、FXStreetは「2016年1月以来の水準」、Forex.comはLSEGのデータをもとに「10年ぶりの大きさ」と伝えている。日経も19日午後、投機筋のユーロ売り越しは10年ぶりの大きさだと見出しで報じた。同じ統計で円先物は買い19万1,256枚、売り14万1,049枚と買い越しで、投機筋はユーロ売り・円買いに傾いている。
背景にあるのはフランスの政治と財政である。CNBCやテンポによると、週末の抗議行動は内務省の集計で約55万人(パリで11万人)が参加し、一部が暴徒化して商店の略奪や放火に広がった。逮捕者は内務省の集計で約2,400人、ルコルニュ首相は約1,200人と説明し、首相によれば警官150人超が負傷した。教員不足や学校の環境への学生の抗議が1か月続いた末に、生活費への不満と重なって広がったものだ。政府は2027年予算で540億ユーロ(約610億ドル)の財政改善を目指し、20日に国民議会で歳入部分の採決にかける。Daybreak Wireによると、財務委員会は10月9日にこの歳入部分を31対3で否決している。公的債務は4〜6月期末で3.6兆ユーロ、GDP比119%と過去最高(CNBC)。
債券市場はすでに反応している。トレーディングエコノミクスによると、フランス10年債の利回りは10月初めに5%前後と2002年以来の高さをつけ、ドイツ10年債との差は2011年のユーロ危機以来の幅に広がった。その後は落ち着き、10月16日時点で仏10年債4.79%、独10年債3.42%、差は137.4ベーシスポイント(ideal-investisseur、Daybreak Wireも約137bp)。1年前の差は約78bpだった。利払い費は政府の見通しで2025年の647億ユーロから2027年には912億ユーロに増える(Daybreak Wire)。
波及は3つの方向に出る。1つ目は物価と金融政策で、ユーロ圏の9月の消費者物価は前年比3.8%(ユーロスタット確報、8月は3.2%、エネルギーは18.8%)と2023年以来の高さにあり、ECBは9月10日に0.25%の利上げで中銀預金金利を2.50%にした。ユーロ安は輸入物価を通じてインフレを押し上げる方向に働くため、10月29日のECB理事会の判断材料になる。2つ目は日本の債券市場で、日経は19日、予算審議の波乱に備えて日本の投資家がフランス国債を売っていると報じ、野村證券の10月15日のレポートはフランス国債から日本国債へ資金が振り向けられている可能性を指摘する声を紹介している。日本の長期金利は19日11時に2.895%へ低下した(日経)。3つ目は為替で、ユーロ円は19日の14時10分までの値幅が176円97銭〜177円59銭(財経新聞)。欧州向けの売上が大きい日本企業の円換算の業績に関わる。
この先は日程が続く。20日の歳入部分の採決は、Daybreak Wireの整理では「崖ではなく目安」で、否決されても憲法49条3項で政府が採決なしに通す道があり、その場合に不信任が成立すれば予算案は廃案になる。10月27日に社会保障予算、11月17日に予算全体の採決、憲法上の期限は12月17日。格付けではムーディーズ(Aa3、見通しネガティブ)のレビューが10月23日、S&P(A+)が11月27日に予定されている(Daybreak Wire)。CFTCの建玉は毎週金曜(米東部時間)に更新され、20日時点の数字は23日に出る。
数字で見る
| 投機筋(非商業部門)のユーロ先物(CFTC、10/13時点) | 買い 222,929枚、売り 360,502枚、差し引き −137,573枚(前週比 −38,241枚)。FXStreet「2016年1月以来」 |
|---|---|
| 同 円先物(CFTC、10/13時点) | 買い 191,256枚、売り 141,049枚、差し引き +50,207枚(買い越し) |
| ユーロ相場(10/19 14:10までの値幅、財経新聞) | 1ユーロ=1.1199〜1.1234ドル、176円97銭〜177円59銭 |
| 仏独の10年債利回り(10/16、ideal-investisseur/Daybreak Wire) | 仏 4.79%、独 3.42%、差 137.4bp(1年前は約78bp)。10月初めの差は2011年以来の幅(トレーディングエコノミクス) |
| 週末の抗議(CNBC・テンポ) | 参加 約55万人(内務省集計、パリ11万人)。逮捕 内務省集計 約2,400人/首相の説明 約1,200人。警官の負傷 150人超(首相) |
| 2027年予算と債務(CNBC) | 財政改善 540億ユーロ、赤字目標 GDP比5.0%(2026年見込み5.4%)。公的債務 3.6兆ユーロ=GDP比119%(4〜6月期末) |
| ユーロ圏の消費者物価(ユーロスタット、9月確報) | 前年比 3.8%(8月 3.2%)、エネルギー 18.8%、コア 2.5%。ECBは9/10に中銀預金金利を2.50%へ利上げ |
次に見るポイント
- 10/20 フランス国民議会で2027年予算案の歳入部分の採決。否決なら憲法49条3項を使うか、不信任の動き
- 10/23 ムーディーズのフランス格付けレビュー(Aa3・ネガティブ。Daybreak Wire)。10/23 公表のCFTC建玉(10/20時点)でユーロの売り越しが続くか
- 10/27 社会保障予算の採決、11/17 予算全体の採決、12/17 憲法上の期限
- 10/29 ECB理事会(9月に中銀預金金利2.50%へ利上げ。10月の消費者物価の速報は10月末)
- 仏独10年債の利回り差(10/16 137.4bp)とユーロ円(19日 177円前後)の推移
関連する動画
出典
- CFTC Commitments of Traders(CME 通貨先物、10/13時点)
- ユーロスタット 9月の消費者物価 確報(Eunews の報道、10/16)
- FXStreet「CFTC Report: Euro and Aussie shorts build」(10/18)
- CNBC「France hit by worst unrest in years」(10/19)
- ideal-investisseur OAT/Bund spread(10/16時点)
- Daybreak Wire「French Budget Vote Oct. 20: What It Decides and What Follows」
- 財経新聞「東京為替:ドル・円は高値もみ合い、ユーロに買戻し」(10/19 14:10)
※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。



