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特集 | 企業・決算 | 2026年10月31日 10:43

インテルってどんな会社? 日本の電卓から王者、そして1日28%安まで

米インテルの株価が10月30日(金)、1日で28.58%下げ、65.76ドルで終えた。1日の下げとしては1974年以来の大きさで(Yahoo Finance の計算)、6月22日(月)に付けた最高値の半分を下回った。世界初の商用マイクロプロセッサを日本の電卓会社の注文から生んだ会社が、どう王者になり、どこでつまずき、立て直しの途中でなぜ売られたのかを、日本の部品メーカーへの広がりとあわせてまとめた。

動画:テレ東BIZ ダイジェスト「米インテル 株価一時↓20%超 売上高見通し 予想下回る【モーサテ】」(2026年10月30日) YouTube で見る

インテルは1968年7月18日(木)、ロバート・ノイス氏とゴードン・ムーア氏が、勤めていたフェアチャイルド・セミコンダクターを辞めて設立した。最初の製品は1969年のメモリー(SRAM「3101」)で、はじめは「メモリーの会社」だった。転機は日本から来た。1969年、電卓メーカーのビジコン(日本計算器販売)が、電卓「141-PF」用のICの設計を依頼した。12個のチップでつくる案を、インテルのテッド・ホフ氏が「小さな汎用のコンピューター」として組み直すことを提案し、4個のチップの構成になった。その1つが、1971年11月15日(月)に発表された「4004」で、インテルや各メディアは世界初の商用マイクロプロセッサと位置づけている。ビジコンの技術者だった嶋正利氏は、1970年4〜10月にインテルで、フェデリコ・ファジン氏とともに4004の論理設計やテストのプログラムを受け持った。米国のコンピューター歴史博物館は2009年、4004を開発したチームの一員として嶋氏をフェローに選んでいる。だれの功績がどれだけ大きいかには見方の違いがあるが、日本の電卓会社の注文から生まれ、日本の技術者が設計に加わったチップだったことは確かだ。

王者への道は、メモリーをやめる決断から始まった。1985年、日本のメーカーとの競争でDRAM(メモリー)の採算がとれなくなり、インテルはメモリーから手を引いてマイクロプロセッサー(CPU)に集中した。のちにCEOとなるアンディ・グローブ氏(3人目の社員)は、ムーア氏に「新しいCEOが来たら何をすると思うか」と尋ね、「メモリーをやめるだろう」との答えに、それなら自分たちでやろうと決めたと振り返っている。1986年は約1億7300万ドルの赤字で、工場を閉じ、多くの人を減らした。一方、1981年8月12日(水)に発売された「IBM PC」はCPUにインテルの「8088」を使い、今の「x86」の流れが広がった。1991年には、パソコンメーカーの広告にロゴを入れてもらい、その広告費の一部をインテルが負担する「Intel Inside」を始め、部品の名前を消費者に覚えてもらった。時価総額は2000年8月に約5000億ドルの山をつけ、売上高は2021年の790億ドルが過去最高だ(会社の年次報告書)。2018年4〜6月には、サーバー用CPUの98.7%をインテルが占めていた(Mercury Research の推計)。

つまずきは2000年代の後半から重なった。当時のポール・オッテリーニCEOは2013年5月、米誌アトランティックのインタビューで、初代iPhone向けのチップを取れなかった、あるいは見送ったと認め、値段が合わなかったと説明した。製造でも遅れた。10ナノの技術は当初2016年の予定が何度も延び、本格的な量産品が出たのは2019年9月。2020年7月23日(木)には次の7ナノも6〜12か月遅れると発表し、株価が急落した。同じ年の6月22日(月)には、アップルがMacのCPUをインテル製から自社開発のチップに切り替えると発表している。AI向けの半導体でもエヌビディアに後れ、2024年10月には、AI向けの「Gaudi(ガウディ)」が2024年の売上目標の5億ドルに届かないと説明した。2024年8月2日(金)には、決算と配当の停止、人員削減を受けて株価が約26%下げた。2024年通期は188億ドルの赤字(売上高531億ドル)で、11月8日(金)にはダウ平均の採用銘柄から外れ、代わりにエヌビディアが入った。ライバルのAMDは、2026年4〜6月にパソコン用CPUで30.3%、サーバー用CPUの売上金額で約46%を占めるまでになった(Mercury Research の推計)。

立て直しは2021年に始まった。2月にCEOに就いたパット・ゲルシンガー氏は、自社の工場で作り、外部の工場も使い、他社のチップを請け負う「ファウンドリー事業」を始める「IDM 2.0」を打ち出した。米国の半導体補助金(CHIPS法)は2024年11月26日(火)に最大78.6億ドルで確定したが、ゲルシンガー氏は12月1日付で退いた。2025年3月18日(火)には、半導体の設計ソフトの会社ケイデンスの元CEO、リップブー・タン氏がCEOに就いた。8月7日(木)にトランプ大統領がタン氏に辞任を求めた2週間後の8月22日(金)、米政府がインテル株4億3330万株を89億ドルで取得すると発表した。お金は、まだ払われていなかった補助金を株に振り替えたもので、取得時の持ち分は9.9%、いまは約8%(会社の発表の株数からヨリビケ計算)。取締役は出さず、議決権も原則として取締役会に合わせる「受け身の株主」だ。ソフトバンクグループ(8月18日発表、20億ドル)、エヌビディア(9月18日発表、50億ドル、約4%)も出資した。最新の製造技術「18A」は2025年12月にアリゾナで量産が始まり、最初の製品は2026年1月に発売された。5月8日(金)には米ウォール・ストリート・ジャーナルが、インテルがアップルの一部のチップを作る仮の合意があると報じたが、両社ともコメントしておらず、正式な発表はない。株価は4月に1か月で114%上がり、6月22日(月)に終値140.94ドルの最高値を付けた。年初から約4倍だった。

インテルの歩み:1968年 設立(メモリーの会社)、1971年 日本のビジコンの注文から4004を発表、1981年 IBM PCに8088、1985年 メモリーから撤退しCPUに集中、1991年 Intel Inside、2000年 時価総額約5000億ドル、2018年 サーバー用CPUの98.7%、2020年 アップルがMacを自社チップに、2024年 188億ドルの赤字・ダウ平均から外れる、2025年 タンCEO・米政府が株主に、2026年6月 最高値140.94ドル、2026年10月30日 1日で28.58%安
日本の電卓から王者、そして立て直しの途中へ(出典:Intel、Computer History Museum、半導体産業人協会、Mercury Research、NBC News、Yahoo Finance ほか・ヨリビケ作成)(タップで拡大)

その株価が10月30日(金)に28.58%下げた。きっかけは29日(木)の米国時間に出た7〜9月期の決算だ。売上高は165.1億ドル(前年同期比21%増)、調整後の1株利益は0.52ドルで、LSEGがまとめた予想(0.40ドル)を上回った。ところが10〜12月期の見通しは、売上高150億〜160億ドルと予想(171億ドル)を下回り、調整後の1株利益も0.25ドルと予想(0.43〜0.44ドル)の6割弱にとどまった。理由の1つ目はパソコンだ。メモリーが足りず値段が上がってパソコンが高くなり、会社は世界のパソコンの出荷が2026年に約12%、2027年も約10%減るとみている。CFOは、パソコンの減速は少なくとも来年前半まで続くと説明した。2つ目は、イスラエル南部キリヤットガットの工場(Fab 28)で10月14日(水)に起きたガスの爆発事故で、従業員2人が亡くなった。会社は、10〜12月期の売上高を約3億ドル、粗利益率を約2ポイント押し下げ、来年1〜3月期も同じくらいの影響が出るとしている。一方で、データセンター・AI部門の売上高は73億ドルと78%増えた。タンCEOは、サーバー用CPU「Xeon」へのとても強い需要に応えるため、供給を増やすことを最優先にすると述べており、売れないのではなく作りきれていない面がある。30日は半導体株指数(SOX)が7.20%、AMDが10.88%、エヌビディアが4.22%下げた(株探、Yahoo Finance)。

10月30日(金)の下落率:インテル−28.58%、AMD−10.88%、半導体株指数SOX−7.20%、エヌビディア−4.22%(以上NY終値)、イビデン−15.21%(ストップ安)、アドバンテスト−5.86%、東京エレクトロン−5.19%(以上東証)
10月30日(金)、どれだけ下げたか。東京は米国の取引より先(出典:株探、Yahoo Finance、Yahoo!ファイナンス・ヨリビケ作成)(タップで拡大)

東京では、米国の取引より先に30日(金)の取引で反応が出た。CPUを載せる「ICパッケージ基板」をつくるイビデン(4062)は、9時24分に8601円で寄り付いたあと、9時31分にストップ安の8359円(1500円安、15.21%安)まで下げ、そのまま取引を終えた(株探、Yahoo!ファイナンス)。前日の29日(木)に営業利益の予想を1270億円から1330億円に上げたばかりだった。イビデンの有価証券報告書によると、売上に占めるインテル向けの割合は、2024年3月期の30.9%から、2025年3月期20.8%、2026年3月期18.1%(753億円)と下がり、いまの最大の取引先はエヌビディア(29.4%、1225億円)だ。報告書はインテル向けをパソコン用とサーバー用に分けていない。アドバンテストは5.86%、東京エレクトロンは5.19%下げ、日経平均は1369.36円安の6万3290.11円で終えた。日経平均の下げのうち468.17円分はアドバンテスト1社による(株探の寄与度)。ただし、アドバンテストの有価証券報告書をまとめたEDINET DBで、売上の10%以上を占める取引先として載っているのはTSMCとサムスン電子で、インテルは入っていない。東証プライムでは値上がり807銘柄に対し値下がりは714銘柄で、売りは半導体・AI関連に集中した。同じく基板をつくる新光電気工業は、2023年3月期に売上の27.3%がインテル向けだったが、2025年6月6日(金)に上場をやめており、株価で反応を見ることはできない。

イビデンの売上に占めるインテル向けの割合:2024年3月期30.9%、2025年3月期20.8%、2026年3月期18.1%。2026年3月期のエヌビディア向けは29.4%
イビデンの売上に占めるインテル向けは2年で30.9%→18.1%、いまの最大の取引先はエヌビディア(出典:イビデン 有価証券報告書・ヨリビケ作成)(タップで拡大)

この先は、3つの問いに答えが出るかが焦点になる。1つ目は、インテルの工場で外の会社のチップが本当に作られるか。タンCEOは決算説明会で、チップを組み合わせる技術(先端パッケージ)で次の2四半期に発表できそうな顧客が2社ほどあると述べた(Investing.com がまとめた説明会の要約)が、名前は明かしていない。2つ目は、パソコンの落ち込みがメモリー不足が解けたあとに戻るのか。3つ目は、サーバー用CPUが足りないなかで、作る量をいつ増やせるのか。日程では、11月2日(月)に東証でイビデン・アドバンテスト・東京エレクトロンの取引が再開し、11月3日(火)は文化の日で東証が休み、同じ日の米国時間にAMDが決算を出す。インテル自身の次の決算の日付はまだ発表されていない(例年は1月下旬)。

数字で見る

株価(10/30 NY終値)65.76ドル(−26.31ドル、−28.58%)。1日の下げは1974年以来(Yahoo Finance、株探)
史上最高値(6/22 終値)140.94ドル。10/30 の終値はここから−53.3%(moomoo、StatMuse・ヨリビケ計算)
7〜9月期 売上高・調整後1株利益165.1億ドル(+21%)・0.52ドル(予想0.40ドル=LSEG)(会社の決算発表、CNBC)
7〜9月期 部門の売上高データセンター・AI 73億ドル(+78%)、パソコン向け 81億ドル(−5%)、ファウンドリー 67億ドル(+58%)(会社の決算発表、CNBC)
10〜12月期の会社見通し売上高150億〜160億ドル(予想171億ドル=LSEG)、調整後1株利益0.25ドル(予想0.43〜0.44ドル)(会社の決算発表、CNBC、株探)
主な株主(取得時)米政府 4億3330万株=9.9%(いまは約8%)、エヌビディア 約4%、ソフトバンクグループ 約2%弱(会社・各社の発表、ヨリビケ計算)
イビデン(10/30 東証)8359円でストップ安(−1500円、−15.21%)(株探、Yahoo!ファイナンス)
イビデンの売上に占めるインテル向け30.9%(2024年3月期)→20.8%(2025年3月期)→18.1%(2026年3月期)。最大の取引先はエヌビディア29.4%(有価証券報告書)
ヨリビケの見方10月30日の1日で、インテルの時価総額は約1400億ドル(約22兆円、1ドル157.5円)減り、約3450億ドルになった(会社が開示した株数52.4億〜53.1億株×株価、ヨリビケ計算。Yahoo Finance の「約1400億ドル」と合う)。それでも米政府が持つ4億3330万株の値打ちは約285億ドルで、払った89億ドルの約3.2倍にあたる。イビデンでは、売上に占めるインテル向けの割合が2年で12.8ポイント下がり、2026年3月期はエヌビディア向け(1225億円)がインテル向け(753億円)の約1.6倍だった(有価証券報告書からヨリビケ計算)。いずれも公開された数字の計算で、株価の先行きを示すものではない。

次に見るポイント

  • 11月2日(月):東証でイビデン・アドバンテスト・東京エレクトロンの取引が再開(東京エレクトロンは30日15時30分に今期の営業利益予想1兆1690億円を初めて開示)
  • 11月3日(火):東証は文化の日で休み。同じ日の米国時間にAMDの決算(パソコン用CPUの売れ行きの説明)
  • イスラエルの工場(Fab 28)の生産再開(CFOは29日に「今週末までに」と説明)と、米証券取引委員会に出す四半期報告書での事故の影響の書き方
  • 外の会社の顧客の名前(先端パッケージで「次の2四半期に2社ほど」)と、次の製造技術「14A」の設計キット1.0版(2027年1〜3月の予定)。インテルの次の決算日は未発表

関連する動画

動画:CNBC Television「Intel faces a 'multi-quarter' issue balancing PC weakness with AI data-center gains: Vivek Arya」(2026年10月30日) YouTube で見る
動画:Computer History Museum「Intel 4004 / MCS-4 50th Anniversary Celebration」(2022年7月公開) YouTube で見る

出典

御堂聡一 ・ 特集 10:43 ・ 2026年10月31日

※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。

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