中部電力、一転2150億円の赤字予想 浜岡原発の不正で特損3800億円
中部電力(9502)は29日(木)16時、東証の取引が終わった後に上期(4〜9月)の決算を発表し、今期(2027年3月期)の純損益の予想を1600億円の黒字から2150億円の赤字に引き下げた。浜岡原子力発電所の耐震データの不正で再稼働の見通しが立たなくなり、原子力の設備などで通期3800億円程度の特別損失を見込むためだ。東証の終値は1.48%高の2681.5円だったが、夜間のPTSでは2438円(終値比9.08%安)の値段がついた。
御堂聡一 ・ 特集 07:55 ・ 2026年10月30日決算短信によると、上期の売上高は1兆9452億円で前年同期より11.3%増えた一方、経常利益は410億円で79.1%減、純損益は2804億円の赤字(前年同期は1663億円の黒字)だった。7〜9月の3か月だけで純損益は3156億円の赤字(株探)。今期の予想は、売上高を3兆9000億円から4兆2000億円に引き上げ、経常利益を1850億円から1100億円に、純損益を1600億円の黒字から2150億円の赤字に引き下げた。会社の説明資料では、通期の赤字は2021年度以来5年ぶり。東京新聞は、年間では過去最大の赤字になると伝えている。年間の配当は70円(中間35円)のまま変えていない。
赤字の原因は浜岡原発の問題だ。中部電力は今年1月、浜岡原発3・4号機の再稼働の審査で、地震の揺れの想定(基準地震動)に関わるデータを不正に扱っていたと公表した。9月11日に調査委員会の報告書を受け取り、申請資料の信頼性に重大な疑いがあるとして、同25日に3・4号機の再稼働の申請を取り下げた。共同通信の配信記事(熊本日日新聞)によると、外部弁護士による調査委員会は、経営層が担当部門に再稼働の遅れを厳しく責めたことが圧力となり不正の一因になったと認定し、勝野哲会長と林欣吾社長は9月30日付で辞任、10月1日に安井稔氏が社長に就いた。会社は、運転停止がさらに長引き安全対策の工事費が増えることも想定して将来の収入を見積もり直した結果、原子力発電事業の固定資産の全額3049億円を減損損失に、核燃料の評価損653億円と合わせて上期に3703億円を特別損失に計上した。10月以降の設備投資の分も減損にするため、通期では3800億円程度になる見込みだ。
会社は説明資料で「廃炉を意味しません」と明記し、今回の減損は今ある情報での会計上の判断だとしている。東京新聞によると、安井社長は会見で「浜岡の重要性は何ら変わるものではない」と述べ、廃炉の考えを否定した。一方で、資料には「現時点で再稼働についてお話しできる状況にはありません」とあり、信頼回復を最優先にするとしている。
本業に近い経常利益も、原発とは別の理由で減った。中東情勢の長期化で燃料の値段が上がり、会社は今期の原油の輸入価格の前提を1バレル90ドル程度から105ドル程度に引き上げた。この燃料高の中で、東京電力と折半で出資する発電会社JERAは卸電力市場への販売などで収支が良くなり、中部電力の決算でのJERAの部門の上期の経常利益は1348億円と前年同期より561億円増えた。逆に、電気を売る子会社の中部電力ミライズは電気の仕入れ費用が増え、燃料費が電気料金に反映されるまでの時間差(期ずれ)も損に転じて、経常損益は1038億円の赤字(前年同期は956億円の黒字)になった。同じグループの中で、燃料高が発電では追い風、販売では向かい風になった形だ。送配電の子会社も、地域の電力需要の減少と物価高による費用増で収支が悪化した。
電力株の決算は同じ日に重なった。株探によると、関西電力(9503)は上期の経常利益が65%減、東京電力ホールディングス(9501)は68%減で着地した。夜間PTSでは関西電力も2592.5円と東証の終値2754.0円を5.9%下回った(株探、Yahoo!ファイナンス)。PTSは東証より取引が少なく、30日(金)の東証の値段が同じになるとは限らない。会社は今後、決算説明会を開くほか、半期報告書を11月16日(月)に出す予定。東京新聞によると、新しい中期経営計画は早ければ年内に示す。
数字で見る
| 株価(10/29) | 東証終値 2681.5円(+39.0円、+1.48%)→ 決算発表 16:00 → 夜間PTS 2438円(23:52、終値比 −243.5円、−9.08%)(株探、Yahoo!ファイナンス) |
|---|---|
| 上期(4〜9月) | 売上高 1兆9452億円(+11.3%)、営業損益 −780億円(前年同期 +1455億円)、経常利益 410億円(−79.1%)、純損益 −2804億円(前年同期 +1663億円)(決算短信、説明資料) |
| 今期予想(修正) | 売上高 3兆9000億円→4兆2000億円、経常利益 1850億円→1100億円(−40.5%)、純損益 1600億円→−2150億円(決算短信、株探) |
| 特別損失 | 上期 3703億円(減損損失 3049億円=原子力発電事業の固定資産の全額、核燃料評価損 653億円)。通期は3800億円程度の見込み(説明資料) |
| 部門別の経常損益(上期) | JERAの部門 1348億円(+561億円)、ミライズ −1038億円(前年同期 +956億円)、パワーグリッド −107億円(前年同期 +269億円)(説明資料) |
| 燃料・為替の前提 | 原油の輸入価格 1バレル90ドル程度→105ドル程度、1ドル159円程度→157円程度(説明資料、7/29公表→10/29公表) |
| 自己資本比率 | 41.0%(3月末)→ 38.5%(9月末)(決算短信) |
| 配当 | 年間70円(中間35円)で据え置き(決算短信) |
次に見るポイント
- 10/30(金)9:00 の東証の寄り付き:夜間PTSの値段(2438円)との差
- 11/16(月):半期報告書の提出予定(決算短信)
- 新しい中期経営計画:早ければ年内(東京新聞、安井社長の会見)
- 浜岡原発の再発防止策と原子力規制委員会の対応:会社は「再稼働についてお話しできる状況にない」としている
- 燃料の値段と中東情勢:原油の前提105ドル程度、期ずれの損がどこまで膨らむか(説明資料)
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