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キオクシア、1日で時価総額2.8兆円増 上場の約30倍なのに高値から6割安 赤字から3か月8422億円の黒字へ 30日の決算で見る3つ

28日(水)、キオクシアホールディングス(285A)の株価は13.76%上がり、1日で時価総額がおよそ2.85兆円増えた(ヨリビケ計算)。日経によると、材料は同業の韓国SKハイニックスの決算だ。株価は上場のときの約30倍の水準にある一方、6月の最高値からは6割あまり低い。30日(金)18時45分の決算を前に、どんな会社で、なぜここまで振れるのか、どこを見ればいいのかをまとめた。

御堂聡一 ・ 特集 17:56 ・ 2026年10月28日
動画:ヨリビケ 深掘り:キオクシア 上場の30倍なのに高値から6割安!?(御堂聡一) YouTube で見る

キオクシアの28日の終値は1万4340円で、前日(27日)の1万2605円から1735円(13.76%)上がった。高値は1万4625円、出来高は1億760万7100株(Yahoo!ファイナンス、トレーダーズ・ウェブ)。日経によると、材料は同業の韓国SKハイニックスが28日に発表した7〜9月期決算で、売上高は前年同期の4.3倍の104兆ウォン、営業利益は7.3倍の83兆ウォンだった。前日の米国では、半導体株の指数(SOX指数)が3.60%上がっていた(日経)。この日の日経平均は685円82銭高の6万3954円19銭、TOPIXは0.14%安で、キオクシアの上げは市場全体の中でも目立った。

キオクシアは、NAND型フラッシュメモリーとそれを使ったSSDをつくる会社だ。電気を切っても中身が消えない、いわば「データの倉庫」で、会社によると1987年に当時の東芝が発明した。2026年4〜6月期の売上高1兆7671億円のうち、データセンターやパソコン向けのSSDなどの「SSD&ストレージ」が66%、スマートフォンなどに組み込む「スマートデバイス」が30%、SDカードなどの「その他」が4%だった(決算短信)。工場は三重県四日市市と岩手県北上市にあり、米サンディスクとの合弁で生産能力の約8割を分け合う(有価証券報告書)。調査会社TrendForceによると、4〜6月期のNANDの売上高で世界4位(シェア13.6%)。

値上がりの元にあるのは、メモリーの値段だ。会社は決算短信で、増収の理由を「生成AI用途を中心としたデータセンター向け顧客の需要が旺盛に推移したことによる平均販売単価の大幅な上昇」と説明した。4〜6月期の販売単価は前の四半期より約70%上がり、出荷した容量の伸びは1桁台前半にとどまった(決算説明会資料)。量より値段で売上が膨らんだことになる。背景にはAIの使い方の変化がある。TrendForceは2025年秋、AIが答えを出す「推論」の広がりでデータセンター向けのハードディスクがひどく足りなくなり(納期は最長52週)、フラッシュメモリーのSSDへの置き換えが進むと伝えた。9月30日には、10〜12月期のNANDの契約価格が前の四半期より15〜20%上がると予測し、企業やデータセンター向けのSSDだけは、値上がりの幅が前の四半期より大きくなるとした。一方で会社は、部品が高くなったことで、低価格帯のスマートフォンやパソコンは出荷台数が減る傾向にあるとも説明している(7月の質疑応答集)。

値段しだいで利益が大きく振れるのが、メモリーの「シリコンサイクル」だ。キオクシアは値段が下がった2023年3月期と2024年3月期に2期続けて営業赤字を出し、2024年3月期の純損失は2437億円と過去最大だった(決算短信、EE Times Japan)。そこから2025年3月期に黒字に戻り、2026年3月期の売上高は2兆3376億円と2期連続で過去最高。2026年4〜6月期は、3か月だけで営業利益1兆2700億円、純利益8422億円をあげた。売上高に対する営業利益の割合(営業利益率)は、2024年3月期の−23.5%から71.9%に変わった(ヨリビケ計算)。会社が7月31日(金)に示した7〜9月期の見通しは、売上高2兆3900億円、営業利益1兆8900億円、純利益1兆2700億円で、純利益は前年同期(406億円)の約31倍にあたる(決算短信、日経)。同じメモリーのSKハイニックスも、7〜9月期の営業利益が前年同期の約7.3倍と、同じ形で利益が膨らんでいる。

キオクシアの営業利益率の棒グラフ:2022年3月期14.2%、2023年3月期−7.7%、2024年3月期−23.5%、2025年3月期26.5%、2026年3月期37.2%、2026年4〜6月期71.9%、7〜9月期の会社の見通し79.1%
営業利益率は−23.5%から71.9%へ(7〜9月期は会社の見通し。出所:キオクシアHD決算短信、ヨリビケ計算)(タップで拡大)

株価も大きく振れてきた。上場は2024年12月18日(水)で、公開価格は1455円、初値は1440円と公開価格を下回った。10月1日の株式分割(1株を3株に)で直すと公開価格は485円になり、28日の終値はその約29.6倍。6月12日(金)には終値で計算した時価総額が44兆3627億円となり、トヨタ自動車(43兆8239億円)を上回って国内1位になった(共同通信、MONOist)。上場来の高値は6月22日(月)の取引中につけた3万7567円(分割で調整)で、28日の終値はそこから61.8%低い。分割後も、10月5日(月)の高値1万9750円から、10月15日(木)には一時1万2000円台まで下げていた(トレーダーズ・ウェブ、Investing.com)。

もとをたどると、キオクシアは東芝のメモリー部門だった。東芝は米国の原子力子会社ウエスチングハウスの損失で2017年3月末に債務超過に陥り、立て直しのために分社した「東芝メモリ」を、米投資ファンドのベインキャピタルを中心とする日米韓の企業連合に約2兆円で売った(2018年6月1日に完了、東芝の発表・EE Times・東洋経済)。東芝はこのとき3505億円を出し直して議決権の40.2%を持ち続け、連合にはきょうの材料となった韓国SKハイニックスも加わっていた。会社は2019年にキオクシアへ名前を変えた。28日の終値で計算すると、時価総額はおよそ23兆円(1万4340円×発行済株式16億4404万5264株、ヨリビケ計算)。東芝が売った値段の10倍あまりにあたる。

株主の顔ぶれにも、意外な点がある。会社の開示によると、8月3日時点の名義上の筆頭株主は「BCPE Pangea Cayman2」(議決権14.19%)。投資ファンドのベインキャピタルの名前が付いているが、その中身はSKハイニックスの社債と結びついた持ち分で、SKハイニックスは2028年まで議決権を15%超持たないことで合意している(会社の開示、有価証券報告書)。ベインキャピタル自身は7月までに持ち株をすべて売った(ロイター、Investing.com)。28日の材料になったSKハイニックスは、同業であると同時に、この仕組みで最大級の持ち分につながる会社でもある。もとの親会社の東芝は市場で売却を続け、持ち株比率は10月1日時点で11.8%になった(日経)。また、日本取引所グループは、TOPIXの計算に使うキオクシアの浮動株比率(市場で売り買いされやすい株の割合)を15%から50%に引き上げ、急な変化を避けるため10月30日(金)と11月30日(月)の2回に分けて反映する。株探の夕刊は、指数に連動して運用する資金などの買いが2兆円を超えるという市場の試算を伝えているが、試算した人は示されていない。

30日(金)18時45分の決算で見る3つ:①7〜9月の実績と会社の見通しとの差、②10〜12月期の見通し、③設備投資を増やすか
30日の決算で見る3つ(出所:キオクシアHD決算短信・質疑応答集、ヨリビケ作成)(タップで拡大)

30日(金)は、材料が1日に集まる。日本時間の朝5時30分には合弁相手のサンディスクが決算の電話会議を開き(米国時間29日午後1時30分〔太平洋時間〕)、取引終了時にはTOPIXの浮動株比率の1回目の見直しが反映され、18時45分にキオクシアの7〜9月期決算が出る予定だ。決算は取引時間の後なので、株価の反応は11月2日(月)の取引に出る。見るのは3つ。①7〜9月期の実績が、会社の見通し(純利益1兆2700億円など)と比べてどうだったか。②会社は通期の予想を出さず次の四半期だけを示すので、10〜12月期の見通しがどうなるか。③工場への投資を増やすか。会社は7月、今年度の設備投資を4500億円とし、市場の状況によっては増やすことも検討すると説明していた(質疑応答集)。ヨリビケは株価の予想はしない。決算が出たら、この3つの物差しでもう一度整理する。

数字で見る

キオクシアの終値(10/28)1万4340円、前日比+1735円(+13.76%)、高値1万4625円(Yahoo!ファイナンス、トレーダーズ・ウェブ)
1日で増えた時価総額(10/28)約2兆8524億円=1735円×発行済株式16億4404万5264株(会社の株式分割のお知らせ、ヨリビケ計算)
SKハイニックス 7〜9月期(10/28発表)売上高104兆6155億ウォン(前年同期の約4.3倍)、営業利益83兆3338億ウォン(約7.3倍)(会社発表、日経)
キオクシアの営業利益率−23.5%(2024年3月期)→ 71.9%(2026年4〜6月期)→ 79.1%(7〜9月期の会社の見通し)(決算短信、ヨリビケ計算)
株価の歩み(株式分割を調整)公開価格485円(2024/12)→ 上場来高値3万7567円(2026/6/22、取引中)→ 1万4340円(10/28終値)
東芝が売った値段といま約2兆円(2018/6/1、東芝メモリの売却。東芝の発表・EE Times)→ 時価総額 約23兆円(10/28終値×発行済株式、ヨリビケ計算)
大株主名義上の筆頭株主 BCPE Pangea Cayman2 議決権14.19%(8/3、SKハイニックスと結びついた持ち分)、東芝11.8%(10/1)(会社の開示、日経)
次の決算10月30日(金)18:45予定。7〜9月期の会社の見通しは売上高2兆3900億円・営業利益1兆8900億円・純利益1兆2700億円(7/31決算短信)
ヨリビケの見方28日の上げ幅1735円に、分割後の発行済株式16億4404万5264株をかけると、1日で増えた時価総額は約2兆8524億円(会社が持つ自社株を除くと約2.77兆円)。この日に売買された1億760万7100株は、発行済株式の6.55%にあたる(107,607,100÷1,644,045,264)。株価は公開価格を分割で直した485円の29.6倍(1万4340÷485)なのに、6月22日の高値3万7566.7円からは61.8%低い(1万4340÷3万7566.7−1)。営業利益率で見ると、2024年3月期の−23.5%から2026年4〜6月期の71.9%まで、約95ポイント動いた。「上場の30倍」と「高値から6割安」が同時に成り立つのは、利益そのものがこれだけ振れる会社だからだ(いずれもヨリビケ計算)。

次に見るポイント

  • 10月30日(金)5:30(日本時間):合弁相手の米サンディスクの決算の電話会議(米国時間29日午後1時30分、太平洋時間)
  • 10月30日(金)取引終了時:TOPIXでのキオクシアの浮動株比率の見直し1回目(15%→50%を2回に分けて反映)
  • 10月30日(金)18:45:キオクシアの7〜9月期決算。①会社の見通しとの差 ②10〜12月期の見通し ③設備投資を増やすか
  • 11月2日(月):決算を受けた最初の取引
  • 11月30日(月):浮動株比率の見直し2回目

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出典

※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。

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