ムーディーズ、フランスの格付け据え置き 国債利回り5%台、独との差は15年ぶり
米格付け会社ムーディーズは10月23日(日本時間24日朝)、フランスの国債格付けを「Aa3」に据え置き、見通しも「ネガティブ(弱含み)」のまま維持した。ロイターによると、債券市場は格下げをある程度織り込んでいた。ただ、仏10年債の利回りは5%台、ドイツとの利回り差は約172ベーシスポイント(10/23)と、ユーロ危機以来の高い水準が続いている。
桐生レオン ・ 特集 18:50 ・ 2026年10月24日ムーディーズは定期の見直しを終え、フランスの格付けをAa3(S&Pなどの「AA−」に相当)のまま据え置いた。見通しのネガティブは2025年10月から付いている。ロイターとCNBCによると、ムーディーズは理由として、2027年の赤字を減らす予算が成立し、資金調達のコストと社会の緊張がこの先数か月である程度和らぐことを前提にしていると説明した。一方で、議会が多くの党に分かれた状態が続けば、立法の働きを妨げるおそれがあるとして、ネガティブの見通しは外さなかった。赤字を縮められれば見通しを「安定的」に戻しうる、とも示している。仏財務省は、据え置きは2027年予算案への信頼の表れだとする声明を出した。
背景には、ヨリビケが10月19日に伝えたフランスの暴動と予算審議がある。ロイターによると、仏10年債の利回りは22日(木)に一時5.14%と2002年7月以来の高さをつけ、ドイツ国債との利回り差も15年ぶりの幅に広がった。フランス銀行とドイツ連銀のデータをまとめた ideal-investisseur によると、23日時点で仏10年債5.05%、独10年債3.33%、差は171.8ベーシスポイント。トレーディングエコノミクスでも23日の仏10年債は5.04%で、格付けがフランスより低いイタリア(4.59%)を上回っている。国民議会は2027年予算案から歳出削減の柱の一部を削っており、赤字目標はGDP比5.0%(2026年見込み5.4%)。
据え置きで「格下げによる売り」はひとまず避けられたが、市場の不安が消えたわけではない。ロイターは、来年4月18日・5月2日の大統領選まで様子を見たいという運用会社の声や、選挙のあとにムーディーズ・S&P・フィッチの3社がそろって「BBB」まで下げれば、格付けに条件のある投資家が売らざるを得なくなるおそれがあるというRBCブルーベイの見方を伝えている。日経も24日夕、格下げは免れたが財政再建への市場の不信は残ると報じた。
日本の投資家にも関わりがある。ユーロは23日に1ユーロ=1.1202ドル(トレーディングエコノミクス)と1か月で1.57%下がった。19日に177円前後だったユーロ円は、ヨリビケの計算で175円台後半にある。欧州向けの売上が大きい日本企業は、ユーロ安で円に直した売上が目減りする。また19日には、日本の投資家がフランス国債を売っていると日経が報じていた。ユーロ圏の10月の景況感(PMI)は4か月ぶりの低さで、フランスは景気の分かれ目の50を下回った(日経)。
この先は、29日のECB理事会(トレーディングエコノミクスによると金利の据え置きが大方の見方)、仏議会での予算審議、11月27日に予定されるS&Pの見直し(Daybreak Wire)が続く。週明け26日の欧州市場で、仏独の利回り差が縮まるのか、高いまま残るのかが最初の手がかりになる。
数字で見る
| ムーディーズの判断(10/23) | Aa3(AA−相当)で据え置き、見通しネガティブを維持(ロイター・CNBC) |
|---|---|
| ほかの格付け会社 | S&P・フィッチは A+(ムーディーズより1段低い)。S&Pの次の見直しは11/27予定(Daybreak Wire) |
| 仏10年債の利回り | 10/22 一時5.14%(2002年7月以来、ロイター)。10/23 5.05%(ideal-investisseur)/5.04%(トレーディングエコノミクス) |
| 仏独の利回り差(10/23) | 171.8bp(独10年債 3.33%)。10/16は137.4bp、1年前は約78bp |
| イタリア10年債(10/23) | 4.59%(トレーディングエコノミクス)。フランスの方が約0.45ポイント高い |
| ユーロ(10/23) | 1ユーロ=1.1202ドル、1か月で−1.57%(トレーディングエコノミクス) |
| 仏の財政(ロイター・CNBC) | 赤字 GDP比5.4%(2026年見込み)→ 2027年予算の目標5.0%。EUの基準は3% |
次に見るポイント
- 10/26(月) 欧州市場で仏独の利回り差(10/23 171.8bp)が縮まるか
- 10/29(木) ECB理事会(9月に中銀預金金利を2.50%へ利上げ)
- フランス国民議会の2027年予算審議(社会保障予算・予算全体の採決、憲法上の期限は12/17)
- 11/27 S&Pのフランス格付けの見直し(A+、Daybreak Wire)
- ユーロ円(23日 約175.7円=ヨリビケ計算)と欧州向け売上の大きい日本企業の決算のコメント
関連する動画
出典
- ロイター「France spared Moody's ratings downgrade as it struggles with unrest」(10/23、Global Banking & Finance Review 掲載)
- CNBC「Moody's holds steady on France's credit rating」(10/23)
- ideal-investisseur OAT/Bund spread(フランス銀行・ドイツ連銀のデータ、10/23時点)
- Trading Economics フランス10年債利回り(10/23)
- Trading Economics イタリア10年債利回り(10/23)
- Trading Economics ユーロ・ドル(10/23)
- 日本経済新聞 ニュース速報一覧(10/24、仏国債・ユーロ圏景況感の記事)
※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。



