英国中銀、約3年ぶり利上げで4%に 反対の1人は0.5ポイント上げを主張
イングランド銀行(英国の中央銀行)は日本時間5日(木)21時、政策金利を3.75%から4%に0.25ポイント引き上げた。利上げは2023年8月以来で、中東の紛争によるエネルギー高で、物価は来年半ばに5%前後まで上がるとみている。反対した1人は据え置きではなく0.5ポイントの利上げを求めており、今週の豪州(3日)に続いて、主要な中央銀行の議論が「どこまで上げるか」に傾いていることが表れた。
まず決定の中身だ。4日(水)までの金融政策委員会で、政策金利(バンクレート)を0.25ポイント上げて4%とする案が賛成8・反対1で決まり、5日(木)に公表された(イングランド銀行の発表)。反対したマン委員は、0.5ポイント上げて4.25%にすべきだと主張した。CNBC によると利上げは2023年8月以来で、決定の前から市場は利上げの確率を99%超と見込んでいた(LSEG のデータ)。利上げそのものは予想どおりで、市場が見ていたのは、次の利上げがあるかどうかだった。
背景にあるのは、エネルギーの値段だ。英国の9月の消費者物価は前年比3.5%に上がり、CNBC によると車の燃料が押し上げた。イングランド銀行は、中東の紛争が長引いてエネルギー価格がさらに上がり、利上げが必要なほどの物価の圧力が積み上がったと説明した。物価は来年半ばに5%前後まで上がる見通しだという。景気の指標が予想より強かったことや、エネルギー高が賃金やほかの値段に広がる「二次的な影響」のおそれが9月より高まったことも理由に挙げた。一方で「金融政策はあらかじめ決まった道筋にはない」とし、委員のテイラー氏は今回を「利上げの連続の始まりではない」と位置づけた(イングランド銀行の要旨)。CNBC によると、英国はエネルギーを輸入に頼る国で、外からのエネルギー高の影響を受けやすい。
市場の反応は落ち着いていた。ロイターによると、金利の見通しに敏感な英国の2年債の利回りは約0.03ポイント上がって4.77%、ポンドは1ポンド=1.3468ドル前後でほぼ横ばい、ロンドンの株価指数FTSE100は0.7%高だった。10年債の利回りは5.1546%と約0.02ポイント上がった(CNBC)。動いたのは次の利上げの見込みで、サクソ・バンクのニール・ウィルソン氏によると、12月の利上げの確率は決定の前の4分の1ほどから五分五分に近づいた。ただ見方は分かれており、ブラックロックのビベック・ポール氏は「市場は利上げを織り込みすぎている」とし、シュローダーのデビッド・リース氏は英国の政策金利の天井を4.25%とみている(いずれもロイター)。
読み解くと、注目すべきは「反対票の向き」だ。今回の反対は、もっと上げたい側の1票だった。米連邦準備制度理事会(FRB)は10月28日(水)、金利を3.75〜4%に据え置いたが、クック理事とハマック・クリーブランド連銀総裁の2人が0.25ポイントの利上げを求めて反対した(CNBC)。日銀も10月30日(金)の据え置きで、高田委員が1.5%への利上げを求めて反対している。欧州中央銀行(ECB)は9月に0.25ポイント上げ、10月29日(木)は預金金利2.5%で据え置いた(CNBC)。豪州は3日(火)に今年5回目の利上げをした。CNBC は、米国とイスラエルがイランと戦争を始めてから利上げに動いた主要な中央銀行のうち、英国が最後だったと伝えている。据え置いた中央銀行でも反対は利上げ側に出ており、エネルギー高を受けて、各国の金利の議論の重心が上に寄っていることを示している。きょう公表された日銀の9月会合の議事要旨でも、ある委員が「米欧の中央銀行が利上げに向かうなか」と述べていた。
この先の注目は12月だ。イングランド銀行の次の決定は12月17日(木)で、日銀の会合(12月17日・18日)と重なる。CNBC によると、ベイリー総裁は、紛争に本当の進展がなければエネルギーによる物価のリスクは上振れで、さらなる利上げの理屈も理解できると述べた。日本では11月10日(火)に日銀の10月会合の「主な意見」が出る。英国の政策金利4%と日銀の1.25%の差は2.75ポイントで、金利の差は為替の動きの材料の1つになる。一般に、海外で利上げが進んで海外の金利が上がると、日本の長期金利にも上向きの力がかかりやすいとされる。
数字で見る
| 英国の政策金利(11/5 木 日本時間21時公表) | 3.75% → 4%(+0.25ポイント)、賛成8・反対1(マン委員は4.25%を主張)=イングランド銀行 |
|---|---|
| 前回の利上げ | 2023年8月=CNBC |
| 英国の物価 | 9月の消費者物価 前年比3.5%、来年半ばに5%前後の見通し=イングランド銀行 |
| 英国債・ポンド・株(11/5 決定後) | 2年債4.77%(約+0.03ポイント)、ポンド1.3468ドル前後、FTSE100 +0.7%=ロイター/10年債5.1546%(約+0.02ポイント)=CNBC |
| 12月の利上げの確率 | 決定前 約4分の1 → 五分五分に近い(サクソ・バンクのウィルソン氏、ロイター) |
| ほかの中央銀行 | FRB 3.75〜4%据え置き(10/28、2人が利上げを主張)=CNBC/ECB 預金金利2.5%据え置き(10/29、9月に利上げ)=CNBC/豪州 4.85%(11/3)=RBA/日銀 1.25%(10/30 据え置き、1人が利上げを主張)=日銀 |
| 英国と日銀の政策金利の差 | 2.75ポイント(4% − 1.25%、ヨリビケ計算) |
次に見るポイント
- 11月10日(火)8:50:日銀の10月会合の「主な意見」。利上げのペースを速める意見がほかにもあるか
- 英国の10月の消費者物価(発表日は英国家統計局の公式サイトで確認)。燃料以外の値段に広がっているか
- 12月17日(木):イングランド銀行の次の決定。利上げ派がマン委員のほかにも出るか
- 12月17日(木)・18日(金):日銀の金融政策決定会合
- 中東の紛争と原油・天然ガスの値段。ベイリー総裁は、進展がなければ物価のリスクは上振れとしている
関連する動画
出典
- Bank of England「Bank Rate increased to 4% - November 2026 Monetary Policy Summary and Minutes」(2026年11月5日)
- CNBC「Bank of England hikes interest rate for the first time since Iran war, warns inflation will near 5%」(11月5日)
- ロイター(AOL 掲載)「Instant View: Bank of England delivers first rate hike in three years, gilt yields rise」(11月5日)
- CNBC「Fed interest rate decision October 2026: Fed holds rates steady」(10月28日)
- CNBC「European Central Bank keeps key interest rate on hold at 2.5%」(10月29日)
- 日本銀行「金融政策決定会合 議事要旨(2026年9月17、18日開催分)」(11月5日公表)
- RBA「Monetary Policy Decision」(11月3日)
桐生レオン ・ 特集 22:50 ・ 2026年11月5日※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。









