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特集 | 深掘り | 2026年11月6日 08:03

民主党の勝ちで、なぜAI株が売られた? 「使う側」は上がり「作る側」は売られた アドバンテスト1社で日経平均−1097円

11月5日(木)の日経平均は1110.73円安の6万1077.90円。その下げのほとんどは、半導体の検査装置をつくるアドバンテスト1社の分(−1097円、フィスコの寄与度)だった。きっかけは11月3日(火)の米中間選挙で、民主党が上院・下院の両方で多数派をとったこと。AIのデータセンターが争点になった選挙のあと、同じAIでも「使う側」は買われ「作る・売る側」は売られた。5日(木)の米国ではその売りが半導体全体に広がり、ダウ平均は1833ドル安となった。

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米国の中間選挙は11月3日(火)に投票があり、AP の判定で、民主党が上院・下院の両方で多数派をとった。上院は民主54・共和44で2議席(ミシシッピ・アラスカ)が未確定、下院も最終の議席数はまだ出ていないが、どちらも多数派は決まった。大統領は共和党のトランプ氏のままなので、2027年1月から議会と大統領の党が分かれる「ねじれ」になる。トランプ氏は民主党と協力するとしつつ、必要なら拒否権を使うと述べた。米国では法律は上院・下院の両方で可決し、大統領が署名して成立する。拒否権を覆すには両院それぞれで3分の2の賛成が要り、上院では67議席にあたるが、民主党の54議席はこれに届かない。

AIが株価の話になったのは、データセンターが選挙の争点の1つになったからだ。データセンターは大量の電気を使い、電気代を上げると心配された。米労働統計局の消費者物価のうち「電気」は、2026年9月に前年同月比で4.4%上がっている(公表値からヨリビケ計算)。CNBC によると、データセンターをめぐる地域の住民投票は10州で41件あり、ノースダコタ州ハーウッドの1件を除く40件で、データセンターに反対する側が勝った。州知事選では、テキサス州のジーナ・イノホサ氏、ジョージア州のケイシャ・ランス・ボトムズ氏、オハイオ州のエイミー・アクトン氏と、データセンターの建設の一時停止(オハイオは条件つき)を掲げた民主党の候補が勝った。ただし、これらは選挙戦での公約で、まだ実行されていない(Fortune)。テキサスでは知事の権限には限りがあるとの指摘もあり、イノホサ氏の就任は2027年1月19日(火)だ。ゴールドマン・サックスのストラテジストは選挙の前に、民主党の議会はデータセンターの税優遇を絞るかもしれないが、全国一律の建設停止はどの結果でもありそうにない、との見方を示していた(CNBC)。

選挙の翌日、11月4日(水)の米国株は、結果が予想どおりだったことなどからダウ平均が1569ドル高(3.03%高)と大きく上げた。ところがAIの中では明暗が分かれた。AIの半導体を売るエヌビディアは3.17%安、米半導体株指数(SOX)は3.13%安、AI向けのクラウドを貸すコアウィーブは9.90%安。一方、AIを使う側のマイクロソフトは6.68%高、アマゾンは6.12%高、アップルは5.31%高だった。ロイターは、データセンターの建設が遅れれば大手ITのAIへの投資が抑えられ、すでにある設備の価値が上がる、との見方から大手ITが買われたと伝え、建設に関わる電力や設備の会社にも売りが広がったとしている。UBS のアナリストは、2028年に予定される米国のデータセンター容量の増加のうち約30%が、建設の一時停止で危うくなる可能性があるとみる(ロイター)。下げの理由は選挙だけではない。ロイターは、AIのために使う巨額の設備投資が十分な利益を生むのかを疑う投資家が増えている、とも伝えている。

11月4日の米国株の前日比:エヌビディア−3.17%、米半導体株指数SOX−3.13%、コアウィーブ−9.90%、マイクロソフト+6.68%、アマゾン+6.12%、アップル+5.31%。この日、ダウ平均は3.03%高、S&P500は1.58%高
選挙の翌日、同じAIでも「作る・売る側」は売られ「使う側」は買われた(出典:Yahoo Finance、Nasdaq、stockanalysis、ABC、CNBC・ヨリビケ作成)(タップで拡大)

東京では5日(木)、この流れがアドバンテストに集まった。アドバンテストは、できあがった半導体が正しく動くかを出荷の前に調べる検査装置(テスタ)の会社で、2026年4〜9月の売上の99.4%が海外、伸びの主な理由をAI関連の高性能な半導体の生産の増加と説明している(決算短信)。10月28日(水)には中間期として過去最高の業績と通期予想の引き上げ(売上高1兆8630億円、営業利益9670億円)を発表したばかりだった。それでも5日は14.71%安の2万9485円で終えた。フィスコは日経平均ボラティリティー・インデックス(日本の恐怖指数)の記事で、市場では特にAIへの規制強化の可能性が意識されていると書いた。日経も前日4日の記事の見出しで、アドバンテストの下げを「米民主党躍進でAI規制強まるとの懸念」と伝えていた。ただ、AI投資の収益性や高くなった株価への警戒を挙げる見方(media-ir)もあり、理由は1つではない。東京エレクトロンは9.42%安、イビデンは16.31%安、レーザーテックは14.21%安。ソフトバンクグループも下げたが、こちらは主要な子会社アームの業績見通しへの物足りなさ(日経)や、ABB のロボット事業の買収を中国の当局が認めない方針との報道(Investing.com)も重なった。

それでも、日本株が全体で売られたわけではない。日経平均の下げ1110.73円のうち、アドバンテストが1097.07円分、東京エレクトロンが460.15円分を押し下げた(フィスコの寄与度)。2社で1557円分になり、日経平均の下げより大きい。残りの223銘柄を合わせると、逆に約446円の押し上げだった(ヨリビケ計算)。東証プライムでは値上がりが1130銘柄で全体の72.8%、TOPIXは1.16%高の3940.39だった(フィスコ、media-ir)。業績予想を引き上げたトヨタ自動車は16.68%高と大きく上げた。

11月5日の日経平均への寄与度:アドバンテスト−1097円、東京エレクトロン−460円、残りの223銘柄の合計+446円、日経平均−1111円
日経平均の下げのほとんどはアドバンテスト1社の分。残りの223銘柄は合計で押し上げ(出典:フィスコの寄与度・ヨリビケ計算)(タップで拡大)

その後、5日(木)の米国では売りが一気に広がった。ダウ平均は1833.06ドル安(3.44%安)の5万1523.06ドルで、前日の上げを1日で打ち消し、選挙の日(3日)の終値5万1786.72ドルも下回った。S&P500は4.36%安、ナスダック総合は5.52%安で、10月6日(火)の最高値から10%超下げた「調整局面」に入った(Fox Business)。米半導体株指数(SOX)は12.25%安で、ロイターは過去2番目の下げ幅と伝えた。エヌビディアは9.26%安、ブロードコムは10.43%安。ロイターは、民主党が両院の多数派を使ってデータセンターの建設を遅らせるとの懸念が広がったとし、米国の恐怖指数とされる VIX は1日の上げ幅が1年半あまりで最も大きかったと伝えた。Fox Business は、AIのインフラ建設は遅く、高くつくようになる、と市場が受け止めた、とする eToro のアナリストの見方を伝えている。ただ、この日もAIを使う側の下げは小さく、アマゾンは2.19%安、アルファベットは2.20%安にとどまった。シカゴの日経平均先物(12月物・円建て)は6日(金)朝6時7分に5万7055円と、5日の東京の終値より約4000円低かった。

この先は、AIへの投資の勢いが数字でどう見えるかが確かめどころになる。11月10日(火)にはソフトバンクグループが決算を発表し、日本時間18日(水)朝7時ごろにはエヌビディアが8〜10月期の決算の電話会見を開く。米国の政治では、ミシシッピ州の上院選の郡の認定が13日(金)まで、アラスカ州の票の受付が18日(水)まで続き、新しい議会は2027年1月に始まる。データセンターの一時停止を掲げた知事たちが、就任後に実際に何をするのか、議会の委員会がAI企業にどう向き合うのかも、AI株の材料になる。

数字で見る

米中間選挙(11/3 投票)上院・下院とも民主党が多数派(AP)。上院は民主54・共和44・未確定2、下院の最終の議席数は未確定
11/4 米国(選挙の翌日)ダウ +1569ドル(+3.03%)。エヌビディア −3.17%、SOX −3.13%、コアウィーブ −9.90%/マイクロソフト +6.68%、アマゾン +6.12%、アップル +5.31%(Yahoo Finance、Nasdaq、ABC、CNBC)
11/5 日経平均6万1077.90円(−1110.73円、−1.79%、4日続落)。TOPIX は +1.16%(株探、フィスコ、media-ir)
11/5 アドバンテスト2万9485円(−14.71%)。日経平均への寄与 −1097.07円(Yahoo!ファイナンス、media-ir、フィスコ)
11/5 東京エレクトロン−9.42%。寄与 −460.15円(フィスコ、Yahoo!ファイナンス)
11/5 米国ダウ 5万1523.06ドル(−1833.06ドル、−3.44%)、ナスダック −5.52%、SOX −12.25%、エヌビディア −9.26%(Fox Business、ロイター、Yahoo Finance)
米国の電気の物価(2026年9月)前年同月比 +4.4%(米労働統計局の公表値からヨリビケ計算)
データセンターの住民投票10州で41件、うち40件で反対側が勝利(CNBC)
ヨリビケの見方選挙の日(11月3日)の終値と5日の終値を比べると、エヌビディアは206.69ドルから181.60ドルへ約12.1%安く、米半導体株指数(SOX)は約15.0%下げた。一方、アマゾンは250.69ドルから260.21ドルへ約3.8%高く、アルファベットも約0.9%高い(Yahoo Finance、Nasdaq、Fox Business の終値からヨリビケ計算)。2日間で見ても「使う側」は選挙の前より高く、「作る側」だけが大きく下がった形だ。東京では、アドバンテストと東京エレクトロンの2社で日経平均を1557円押し下げ、指数の下げ(1110.73円)を上回った。いずれも公開された数字の計算で、株価の先行きを示すものではない。

次に見るポイント

  • 11月10日(火):ソフトバンクグループの決算(IR カレンダー。アームの見通し、AIへの投資の説明)
  • 日本時間11月18日(水)朝7時ごろ:エヌビディアの8〜10月期決算の電話会見(会社の告知。決算の発表は6時20分ごろの見込み)
  • 2027年1月:新しい議会が始まる。データセンターの一時停止を掲げた3州の知事が就任後に何をするか(テキサスのイノホサ氏は1月19日(火)に就任)

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出典

御堂聡一 ・ 特集 08:03 ・ 2026年11月6日

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