スペースX、ブースト・モバイル買収を協議と米紙 衛星のライバルAST株は11%安
米ワシントン・ポストは11月2日(月、米国時間)、スペースX(SPCX)が米エコースター(ECHO)と、同社の携帯電話のブランド「ブースト・モバイル」を買うか、その回線網を使う交渉をしていると報じた。両社は認めておらず、合意も発表されていない。2日の終値はスペースXが1.22%高、エコースターが1.33%高。スマホと衛星を直接つなぐライバルの米ASTスペースモバイル(ASTS)は11.33%安だった。
ロイターが伝えたワシントン・ポストの報道によると、スペースXはここ数か月、エコースターと、自社ブランドの携帯サービスを始めるための取引を話し合ってきた。形は、ブースト・モバイルそのものを買うか、ブーストが使っている回線網を使わせてもらうかのどちらかだ。イーロン・マスク氏は先月、エコースターのチャーリー・アーゲン会長と会ったという。ブーストは、AT&TとTモバイルUSの回線を借りて携帯サービスを売っている。借りる契約は、ふつう貸し手の同意がないと新しい持ち主に引き継げないため、取引にはAT&TとTモバイルの同意が要る可能性があると報じられている(ロイター)。ロイターによると、エコースターの携帯の契約者は6月末で738万人(ほとんどがブースト・モバイルとGen Mobile)。スペースXとエコースターはロイターの問い合わせにすぐには答えなかった。
背景には、スペースXがこの1年あまり続けてきた電波の買い集めがある。2025年9月、エコースターから2種類の周波数の免許を約170億ドルで買う契約を結んだ(最大85億ドルの現金と、最大85億ドル分のスペースX株。エコースターの発表)。このとき、ブースト・モバイルの契約者がスペースXの次の世代の衛星とスマホの直接通信を使えるようにする長期の契約も結んでいる。11月には別の周波数を約26億ドル分のスペースX株で買い足し、2026年10月8日には全米の800MHz帯の免許の取得を発表した(金額は非公表、ロイターとウォール・ストリート・ジャーナルは約80億ドルと報道)。インベスティング・ドットコムによると、スペースXのブレット・ジョンセン最高財務責任者(CFO)は最近の決算説明会で、米国で「大手の携帯会社になる」ことをめざすと話した。電波はそろいつつあるが、売り場・料金の請求・お客さまの窓口・端末の値引きといった地上の仕組みはまだない。ロイターは、アナリストの見方として、こうした分野に大きな投資が要り、そこは大手3社がすでに大きな組織を持っていると伝えている。ブーストを手に入れれば、その一部を契約者ごと手に入れる形になる。
市場の反応は、10月の800MHz帯のときと違った。10月9日(金)は、スペースXが客を取り合う相手になりうると受け止められ、Tモバイルは13.27%安、AT&Tは9.81%安、ベライゾンは8.75%安と大きく下げた(10月18日のヨリビケの記事)。今回、ロイターによるとTモバイルは取引の始まる前に約2%下げたが、終値は2.37%高の160.15ドルで、AT&Tは0.14%高、ベライゾンは0.72%高だった。代わりに下げたのは宇宙・衛星の株で、ASTスペースモバイルは11.33%安の36.33ドル、ロケット・ラボは4.86%安。スペースXは取引中に一時4%ほど上げ、終値は1.22%高の136.37ドル、エコースターは1.33%高の98.23ドルだった(終値は Yahoo Finance と Nasdaq で一致)。この日はナスダック総合指数も1.07%安で、ハイテク株の売りが続いていた点は割り引いて見る必要がある。
読み解くと、2つのことが見えてくる。1つは、ブーストを通す道は、AT&TとTモバイルの回線と同意を前提にする形だということだ。米ヤフー・ファイナンスの記事によると、Tモバイルのスリニ・ゴパラン CEO は10月28日の決算説明会で、スペースXに回線を貸して格安の携帯会社(MVNO)として売らせる形には「余地がない」と述べる一方、衛星の通信のように自社の商品を補うものの再販には前向きだった。大手が鍵を握る形になるなら、大手の株が売られなかったのは筋が通る。もう1つは、売られたのが、スマホと衛星を直接つなぐ同業のASTだったことだ。ASTは2024年にAT&Tやベライゾンと契約を結んでおり(RCR Wireless など)、日本では楽天モバイルが、ASTの衛星を使う「Rakuten 最強衛星サービス」を2026年10〜12月に始めると発表している(2025年4月の発表、ケータイ Watch)。スペースXの衛星とスマホの直接通信は、日本ではKDDIの「au Starlink Direct」が使っている。東京市場は3日が文化の日で休みのため、楽天グループ(4755)やKDDI(9433)の株価がこの報道をどう受け止めるかは、4日(水)の取引で分かる。
この先の焦点は3つある。第一に、スペースXかエコースターの正式な発表があるか。今は関係者の話をもとにした報道の段階だ。第二に、AT&TとTモバイルが、ブーストの回線の契約をスペースXに引き継ぐことに同意するか。条件しだいで、大手にとっては回線を貸す収入にもなり、客を奪われる相手にもなる。第三に、米連邦通信委員会(FCC)による800MHz帯の取得の承認と、エコースターから買った周波数の移転の時期だ。10月18日の記事のとおり、エコースターからの周波数が実際に移るのは2027年11月ごろの見込みとされている。3日(火)は米国の中間選挙の投票日で、開票は日本時間4日(水)の朝から進む。
数字で見る
| 報道(11/2 月 米国時間) | ワシントン・ポスト(ロイターが配信):スペースXがエコースターとブースト・モバイルの買収か回線の利用を協議。合意の発表はなく、両社は確認せず |
|---|---|
| エコースターの携帯の契約者 | 738万人(2026年6月末、ロイター) |
| 11/2 終値 スペースX(SPCX) | 136.37ドル(+1.22%、取引中は一時約4%高)=Yahoo Finance、Nasdaq |
| 11/2 終値 エコースター(ECHO) | 98.23ドル(+1.33%)=Yahoo Finance、Nasdaq |
| 11/2 終値 衛星・宇宙の株 | ASTスペースモバイル 36.33ドル(−11.33%)、ロケット・ラボ 52.07ドル(−4.86%)=Yahoo Finance、Nasdaq |
| 11/2 終値 米通信大手 | Tモバイル 160.15ドル(+2.37%)、AT&T 21.44ドル(+0.14%)、ベライゾン 45.05ドル(+0.72%)=Yahoo Finance、Nasdaq |
| スペースXの電波の取得 | 2025年9月 約170億ドル(現金と株が最大85億ドルずつ)、11月 約26億ドル(株)=エコースター発表/2026年10月 800MHz帯(約80億ドルと報道) |
次に見るポイント
- 11月3日(火)米国時間:中間選挙の投票。開票は日本時間4日(水)朝から
- 11月4日(水):休み明けの東証。ASTと組む楽天グループ(4755)、スターリンクと組むKDDI(9433)の値動き
- スペースX・エコースターの正式な発表があるか(今は報道の段階)
- AT&TとTモバイルが、ブーストの回線の契約の引き継ぎに同意するか
- FCCによる800MHz帯の取得の承認と、エコースターから買った周波数の移転(2027年11月ごろの見込み)
関連する動画
出典
- EchoStar「EchoStar Agrees to Sell Full Unpaired AWS-3 Spectrum License Portfolio to SpaceX」(2025年11月)
- Nasdaq スペースX(SPCX)の株価
- Yahoo Finance ASTスペースモバイル(ASTS)の株価
- ロイター(Investing.com 配信)「SpaceX in talks to buy Boost Mobile or use its network, Washington Post reports」(11月2日)
- Investing.com(Yahoo Finance 配信)「EchoStar rises on report SpaceX in talks to buy Boost Mobile or tap its network」(11月2日)
- Yahoo Finance「SpaceX Climbs 4% on Reported Boost Mobile Talks; AST SpaceMobile Falls 4%, Rocket Lab Dips」(11月2日)
- TV Tech「EchoStar to Sell Spectrum to SpaceX for $17 Billion」(2025年9月8日)
- ケータイ Watch「楽天モバイルが『Rakuten 最強衛星サービス』、スマホと衛星の直接通信を2026年第4四半期開始」(2025年4月23日)
- RCR Wireless「AST SpaceMobile, Verizon strike deal for direct-to-cellular」(2024年5月29日)
桐生レオン ・ 特集 10:49 ・ 2026年11月3日※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。









