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豪データセンターのNEXTDC、一時45%安 送電工事の遅れで今期見通しを下げる

オーストラリアのデータセンター大手NEXTDC(ネクストDC)は21日、メルボルンの拠点「M3」に電気を送る工事が止まったため、今期(2026年7月〜2027年6月)の利益見通しを約36%引き下げた(中央値どうし)。2日間の売買停止が明けた株価は一時約45%安となった。AIのデータセンターは需要があっても、電気が届かなければ売上にならない――その問題が数字で表れた。

神崎玲子 ・ 特集 12:49 ・ 2026年10月21日
豪データセンターのNEXTDC、一時45%安 送電工事の遅れで今期見通しを下げる
画像:ヨリビケ(AI生成)

オーストラリア証券取引所(ASX)への開示によると、NEXTDCは今期の純収益(売上から直接費を引いたもの)の見通しを6億1500万〜6億4000万豪ドルから4億7500万〜5億豪ドルへ、調整後EBITDA(利払い・税・償却前の利益)の見通しを3億8500万〜4億1000万豪ドルから2億4500万〜2億6500万豪ドルへ下げた。設備投資の見通しも52億5000万〜57億5000万豪ドルから45億〜50億豪ドルに減らした。同社株は19日から売買を停止しており、21日に取引が再開されると、停止前の16日の終値9.18豪ドルに対し、安値は5.07豪ドル(約45%安)まであった。日本時間12時半ごろは5.59豪ドル前後(約39%安)で、ASX 200の中でいちばん大きな下げとなっている(ABCニュース)。

原因は電力会社の工事だ。M3に電気を送る配電会社ジェメナ(Jemena)が、66キロボルトの送電線を増強する工事の一部を9月に止めた。会社の説明では、住民や関係者の反対で作業場所に入れず、道路を管理する地元の自治体の同意も得られていない。ジェメナは工事の再開を「2027年2月より前は見込まない」と伝えてきたといい、M3への電気の次の増強は来期(2027年7月〜2028年6月)にずれ込む見通しになった。さらに先の増強には、上流のブルックリン変電所に新しい変圧器を入れる送電の工事が必要で、これも予定より遅れるという。M3の拡張(第6・7期)に必要な州政府の許可も、11月28日のビクトリア州議会選挙のあと、2027年までずれる見込みだ。

影響を受けるのは、M3でハイパースケーラー(巨大なクラウド事業者)と結んだ長期の契約だ(会社は顧客名を公表していない)。会社は、この契約からの純収益と利益を見通しから外した。8月の見通しにはそれぞれ約1億4000万豪ドルが入っていた。契約そのものは残っているが、納期が遅れたときの値引き(サービスレベルクレジット)や、場合によっては顧客が契約を解除できる権利があり、会社は不可抗力の条項が使えるかを検討している。8月には「今期は純収益・利益とも5割を超える過去最高の伸び」としていただけに、見通しの書き換えは大きい。新しい開発案件と土地の取得はすべて保留し、当面使わない開発用地の売却も検討する。

波及は「AIの電気」の問題として広がる。データセンターの成長を決めるのは、需要より先に、送電線・変圧器・地元の合意という電力側の準備だということを、この発表ははっきり示した。NEXTDCは8月の時点で、東京にも拠点「TK1」をつくるため掘削工事を始めたと開示している。今回の開発の保留がTK1にどう関わるかは、発表文には書かれていない。前の週には、AI企業の借金への不安から米AIクラウドのコアウィーブ株が1週間で25%下げ、NEXTDCの株価も停止前の1週間(10月9日→16日)で約11%下げていた。一方、21日の東京市場はスペースXなどの決算を受けて、午前はAI・半導体株が買われた(日経)。

この先の注目は、11月20日の株主総会だ。会社は、設備投資の計画の見直しの結果をそれまでに公表するとしている。11月3日からは州政府が選挙前の「選挙管理」の期間に入り、11月28日に州議会選挙がある。12月までの半期決算では、M3の遅れで投資不動産の評価額がどれだけ下がるかが出てくる。借り入れの条件(コベナンツ)は守れているとしつつ、M3の遅れが銀行借り入れの引き出しに響く可能性も会社自身が書いている。

数字で見る

株価(10/21、日本時間12時半ごろ)5.59豪ドル前後(停止前の10/16終値9.18豪ドル比 約−39%、ASX・Yahoo Finance)
21日の安値5.07豪ドル(約−45%、Yahoo Finance)
今期の純収益の見通し4億7500万〜5億豪ドル(前回 6億1500万〜6億4000万、会社発表)
今期の調整後EBITDAの見通し2億4500万〜2億6500万豪ドル(前回 3億8500万〜4億1000万、前期実績 2億4880万)
見通しから外したM3の契約純収益・EBITDAとも約1億4000万豪ドル(8月の見通しに含まれていた分)
今期の設備投資の見通し45億〜50億豪ドル(前回 52億5000万〜57億5000万。利息の資産計上を除く比較で約9億8000万豪ドル・17〜19%減)
手元の資金と借入枠(9/30時点)86億7500万豪ドル(現金12億7500万を含む、会社発表)
ヨリビケの見方見通しの中央値どうしで比べると、純収益は6億2750万→4億8750万豪ドル(−22%)、EBITDAは3億9750万→2億5500万豪ドル(−36%)。外した約1億4000万豪ドルは純収益でも利益でもほぼ同じ額で、M3の契約は売上がほぼそのまま利益になる契約だったことが分かる。新しいEBITDAの中央値は前期の実績2億4880万豪ドルより約2%多いだけで、8月に示した「5割超の増益」はほぼ横ばいに変わった。株式の数(約7億6000万株、ASXの時価総額から計算)で見ると、日本時間12時半ごろの下げで失われた時価総額は約27億豪ドル(1豪ドル=約111円で約3000億円)。

次に見るポイント

  • 11/3〜11/28:ビクトリア州の選挙管理の期間と州議会選挙。M3の拡張の許可は2027年にずれる見込み
  • 11/20:NEXTDCの株主総会。設備投資の計画の見直しの結果と、M3の契約の扱いの続報
  • 2027年2月:配電会社ジェメナの工事が再開できるか(会社は「それより前は見込まない」と開示)
  • 2027年2月ごろ:12月までの半期決算。M3の遅れによる投資不動産の評価の下げと、借り入れの条件への影響
  • 米国のAIクラウド・データセンター株(コアウィーブなど)と、電線・電力設備など日本の関連株の反応

出典

※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。