なぜ上方修正なのに売られる? 分かれ目は「市場の予想をどれだけ超えたか」
日立製作所とNECは通期の見通しを引き上げたのに大きく下げた。株価には決算の前から「これくらいは上がるだろう」という期待が入っている。29日(木)の3社の反応は、上方修正したかどうかより、その期待をどれだけ上回ったかで分かれたと読める。
白石ひかり ・ 昼刊 11:55 ・ 2026年10月29日まず事実から。28日(水)の引け後、アドバンテスト・日立製作所・NECの3社はそろって2027年3月期の業績予想を引き上げた(各社の決算短信)。ところが29日の前場は、アドバンテストが一時9%あまり上がった一方、日立は一時9%を超えて下げ、NECは一時10%安になった(日経・株探)。「上方修正=買われる」とは限らないことが、同じ日に3社並んで表れた。
なぜ売られたのか。フィスコは日立について、決算のサプライズ(驚き)が乏しく、目先の「出尽くし感」が先行したと伝えた。NECについては、サプライズの乏しい決算を受けて「見切り売り」が先行しているとし、株価が高値圏にあったことも挙げている。日経もNECの記事の見出しで「材料出尽くし」とした。「材料出尽くし」とは、待っていた発表が出たことで、それを理由に買う人がいなくなり、利益を確定する売りが出やすくなる状態を指す言葉だ。
決め手になったのは「市場予想」との比べだ。証券会社のアナリストは決算の前に業績を予想していて、その平均(コンセンサス)は、決算の前から株価に織り込まれやすい。フィスコによると、アドバンテストは7〜9月期の営業利益が市場予想(2200億円程度)を大きく上回り、通期の新しい予想もコンセンサスを上回った。日立は7〜9月期の調整後営業利益が市場予想を100億円強下回り、通期もコンセンサスをやや下回った(フィスコ)。日経も、日立の通期の純利益は市場予想を下回ったと伝えている。NECは7〜9月期は予想を上回ったが、通期の上方修正は米CSGの連結の効果が主で、ほぼ織り込み済みとみられた(フィスコ)。
上方修正の「幅」も違った。純利益の予想で比べると、アドバンテストは6600億円から7415億円へ12.3%の引き上げで、今期2度目の上方修正だった。日立は9000億円から9200億円へ2.2%、NECの Non-GAAP 純利益は2900億円から3100億円へ6.9%だった(各社の決算短信からヨリビケ計算)。さらにアドバンテストは最大2800億円の自社株買いも決めている。修正の大きさと、市場の予想との差の両方で、アドバンテストが上回っていたことになる。
見方としては、決算の数字を読むときは「前回の会社予想より上か」だけでなく、「市場がいくらを見込んでいたか」と比べる必要がある、ということになる。ただし市場予想はデータ会社の有料情報が元で、報道によって数字が少しずつ違う。ヨリビケは、市場予想を使うときは出どころを付けて伝える。この先の決算でも、上方修正の発表と同時に、報道で伝えられる市場予想との差を確かめると、株価の反応の理由が読みやすくなる。
数字で見る
| アドバンテスト 純利益予想 | 6600億→7415億円(+12.3%、今期2度目)/自社株買い 上限2800億円 |
|---|---|
| アドバンテスト 7〜9月期 営業利益 | 2668億円(市場予想 2200億円程度=フィスコ) |
| 日立 純利益予想 | 9000億→9200億円(+2.2%)。日経は「市場予想下回る」 |
| 日立 7〜9月期 調整後営業利益 | 3490億円(市場予想を100億円強下回る=フィスコ) |
| NEC Non-GAAP 純利益予想 | 2900億→3100億円(+6.9%)。上方修正は米CSGの連結効果が主(フィスコ) |
| 29日前場の安値・高値 | アドバンテスト 高値 +9.13%/日立 安値 −9.59%/NEC 安値 −10.05% |
次に見るポイント
- 決算を見るときは「会社の前回予想」と「市場予想(出どころ付き)」の両方と比べる
- 10/29(木)引け後:イビデン・ルネサスなどの決算と、翌日の株価の反応
- 10/30(金)東京エレクトロン・キオクシアの決算
関連する動画
出典
- アドバンテスト「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」(TDnet、10/28)
- 日立製作所「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」(TDnet、10/28)
- NEC「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」(TDnet、10/28)
- 株探「日立---大幅反落、決算サプライズ乏しく出尽くし感が優勢に」(フィスコ、10/29)
- 株探「NEC---大幅続落、決算サプライズ乏しく売り先行の形に」(フィスコ、10/29)
- 日本経済新聞「NEC株価一時10%安 27年3月通期を上方修正、材料出尽くし」(10/29)
- 株探「話題株ピックアップ【昼刊】」(MINKABU PRESS、10/29)
※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。









