ニデック、役員責任の報告書を公表 損害額は示さず、配当の責任は訂正後に検討
ニデック(6594)は20日17時、会計不正をめぐる役員責任調査委員会の報告書(概要版と公表版、計251ページ)を開示した。16日に結論だけを示していた9人の損害賠償責任について、委員会は一人ひとりの損害の範囲を割り出すのは難しく、責任追及の訴訟で裁判所の判断を待つべきだとした。会社は、分配可能額を超えた配当など「剰余金処分」の責任は報告書の対象外になったとして、過去の決算の訂正が済んでから提訴などを検討すると表明した。
御堂聡一 ・ 特集 18:58 ・ 2026年10月20日
報告書は、委員会が4月7日から10月16日まで、第三者委員会の資料とヒアリングの記録に加えて独自のフォレンジック調査や聞き取りで調べた結果をまとめたもの。調べたのは、資産の健全化や2022年度の構造改革といった会社全体の「負の遺産」の処理方針と、子会社のNPCJ(カメラ用シャッター)とAMEC(車載事業)での個別の不正の2つの軸だ。結論は16日の開示と同じで、永守重信氏・小部博志氏・佐藤明氏・吉本浩之氏・関潤氏・岸田光哉氏の6人と、常勤監査役だった村上和也氏・落合裕之氏の2人に会社法423条1項に基づく責任、元CFOの執行役員(報告書ではD氏)1人に民法などに基づく責任を認めた。一方で、元取締役の片山幹雄氏とグループ会社担当の執行役員(C氏)は、NPCJの不正について任務を怠ったと認めながらも、その不正が今回の巨額の決算修正に与えた影響は大きくないとして、賠償責任は認めなかった。株価は報告書の開示前の取引で、20日の終値が1758円(31円安、1.73%安)だった(株探、Yahoo!ファイナンス)。
報告書によると、処理方針の中身はこうだ。2022年12月、当時のCFOが事業本部とグループ会社に負の遺産の申告を促したところ、想定を超える約1600億円が集まった。そこで、その年度の営業利益に連動する「枠」の範囲だけを構造改革費用として処理し、残りは先送りして何年かに分けて費用にする案件に振り分けた。2025年3月期には、岸田氏らが約492億円の構造改革費用を通期の営業利益とは別枠で計上する案(その場合の営業利益は1908億円)を2025年2〜3月の会議で永守氏に繰り返し提案したが、永守氏は営業利益2400億円は必達だとして認めず、実際に計上したのは賞与の算定期間の変更などで捻出した利益に見合う37億円にとどまったという。委員会はこの方針を、先に達成すべき利益が決まり、そこから逆算して減損する資産を決めるもので「会計における基本的な理念・考え方が逆転している」と指摘し、経営トップの誤った考えをCFOが優先し、後任の社長や監査役も正さなかったと整理した(関西テレビ、NHK も同じ内容を報道)。なお「最も責めを負うべきは永守氏」としたのは3月の第三者委員会の報告で、今回の委員会とは別の調査だ。
株主にとっての注目点は、損害の額がまだ示されていないことだ。委員会は、任務を怠ったことと因果関係がある損害として調査費用などを挙げたが、9人それぞれの関与の度合い(寄与度)に応じた割合は認定せず、裁判所に委ねるべきだとした。会社は報告書をもとに損害賠償請求などの法的措置をとるかを検討し、決めしだい開示するとしている。もう1つは配当の問題だ。ニデックは10月1日の記者会見資料で、決算の修正を反映すると2021年3月期から2025年3月期の決算に基づく配当や自社株買いが毎年、分配可能額を超えていたと示している。委員会はこの点を調べることも検討したが、過去の訂正有価証券報告書がまだ出ておらず、基準になる分配可能額が確定しないとして対象外にした。共同通信によると、この配当をめぐっては、株主がすでに9月、2022〜23年の自社株買いと中間配当が違法だったとして、永守氏と小部氏に約287億円を会社へ支払うよう求める株主代表訴訟を京都地裁に起こしている。
この先の焦点は4つある。第一に、会社が9人に実際に損害賠償を請求するか、請求するなら誰にいくらか。第二に、過去の決算の訂正(訂正有価証券報告書の提出)と、その後の配当の責任をめぐる提訴の判断。第三に、今月末に会社が東京証券取引所に出す内部管理体制の確認書と、特別注意銘柄の指定から1年の審査。第四に、監査法人のPwCジャパンが「意見不表明」とした2026年3月期の有価証券報告書に、適正意見が付くかどうかだ。前日までの株価の動きや、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントの動きは、19日の記事にまとめている。
数字で見る
| 報告書の開示(10/20 17:00、TDnet) | 役員責任調査委員会の報告書。概要版と公表版を合わせて251ページ。調査期間は4/7〜10/16(ニデック開示) |
|---|---|
| 賠償責任を認めた9人 | 会社法423条1項:永守・小部・佐藤明・吉本・関・岸田の6氏と常勤監査役だった村上・落合の2氏、民法等:元CFOの執行役員1人(同) |
| 責任を認めなかった例 | 片山幹雄氏(元取締役)と執行役員C氏。NPCJの不正で任務懈怠はあるが、決算修正への影響が大きくないとして賠償責任なし(同) |
| 2022年度の構造改革 | 負の遺産の申告が約1600億円。営業利益に連動する枠の分だけ処理し、残りは先送り(報告書) |
| 2025年3月期 | 別枠で約492億円を計上する案(営業利益1908億円)→ 永守氏が2400億円必達として認めず、計上は37億円(報告書) |
| 配当・自社株買いの分配可能額超過(会社資料 10/1) | 2021年3月期〜2025年3月期の決算に基づく分:182億・754億・992億・345億・83億円。報告書の対象外、会社は決算訂正の後に提訴などを検討 |
| 株価 10/20 | 終値1758円(−31円、−1.73%)、出来高732万株。報告書の開示前の値。PTSは18:27に1765円(株探、Yahoo!ファイナンス) |
次に見るポイント
- 会社が9人への損害賠償請求などの法的措置を決めて開示するか(時期は未定、「決定し次第」)
- 10月末 内部管理体制の確認書を東証に提出 → 特別注意銘柄の指定から1年の審査
- 過去の決算の訂正有価証券報告書の提出と、その後の配当の責任をめぐる提訴の判断
- PwCジャパンとの協議で、2026年3月期の有価証券報告書に適正意見が付くか
- 京都地裁の株主代表訴訟(永守氏・小部氏に約287億円、共同通信)の進み方
出典
※情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身で。



